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多目的615号室

絵:星香子、文:りお、実働部隊という名のニート:ねり、でお送りする創作ブログです。

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Category: りお > 小説   Tags: ---

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滑り込み615

りおです。今年も今日がやってきた!!!
6月15日なんでもない日おめでとう!
ねりーの仕事のはやさが流石過ぎて日付変わった瞬間に感動してました。

滑り込みですが短文投げてゆきます。
BL小説の書きかけですが、書きかけすぎてまったくボーイズのラブ感がありません。
文中の皆川くんはサイトとpixivに置いている『フジハラさんと僕』に出てくる皆川くんです。
どこかでも書いた気がしますが、もともと三朝(と佐東さん)のほうが『フジハラさんと僕』よりだいぶ前に動かしていたキャラクターで、史緒さんにお友達をというときに三朝さんにお出で頂いたのでした。
この話はプロトタイプ皆川・佐東ともまた違う、フジハラさんが完結したあとあたりに改めて書き始めたものです。
読んだことある友達もたぶんいる笑
続きに折り畳んでおきます。お気が向かれましたらば!
     ワイルドキャット・ストライク

 兄貴助けて、切迫した声で電話をしてきたのは妹だった。
「猫を拾っちゃったの。でも飼えないの」
「何かと思ったら」
 佐東邦彦はひとまず安堵した。就職を期に一人暮らしを始めて早数年、会える機会は減ってしまったが、可愛い可愛い妹なのだ。
「母さんが猫アレルギーなのは分かってたでしょ。どうして拾って来たの」
「だってえ」
 甘ったれた響きだ。これは完全になんとかして貰えると思っている。しかし邦彦のアパートもペットは禁止されている。簡単に任せろと言うわけにもいかない。
「兄貴い」
 かつて同居していたころ、涙や怒りの演技を使い分けていた妹の姿が目に浮かんだ。年が離れているぶん甘えられると弱い。
「……しょうがないなあ、一緒にもらい手を探してあげる」
「わあい、兄貴大好き!」
「とは言っても心当たりはないし、とりあえず市の掲示板に張り紙をするくらいしか思いつかないけど」
 邦彦の住む八色市の市役所には、市民が自由に使うことができる掲示板がある。学校の黒板ほどの大きさで、アルバイトの募集から探しもの、譲りものなど、様々なちらしが貼ってある。市の公報課に問い合わせたところ、規定のサイズ内の張り紙と、記入済みの掲示板使用申請書を併せて持ってくれば良いという。
 翌日、早速パソコンで張り紙を作った。邦彦のアパートにはプリンタがないので、職場の機器を借りることにした。
「うちの市、そんなサービスやってんのか。っつーかお前ワードって」
 上司の呉(くれ)が面白がって画面を覗き込んでくる。
「小さいとはいえウチは印刷所だぞ。もっとやりようがあるだろう」
 呉と邦彦、そして女性職員がひとり。それだけで営業・総務・会計その他雑事を兼務し回しているのだから業務規模は知れている。けれども刷りを担当する職員は皆職人気質で仕事を愛していた。呉は勿論、邦彦もそんな彼らを敬愛し、彼らを支える仕事を楽しんでいる。
「簡単なので充分。店のフライヤーじゃないんだから」
 募集の要件に加え、自分の携帯の番号を書いておく。インターネットに個人情報を書き込むのは抵抗があるのに、アナログの広告ならばさほどではないのはどうしてだろう。
「外回りのついでに市役所に寄っていいですか」
「いいよ」
 呉は簡単に許してくれた。

 社の車を駐車場に停め、久しぶりに市役所に足を踏み入れた。所内は古びていて薄暗い。エレベーター脇にある案内で広報課を探す。表示によれば四階だ。
「うおっと」
 邦彦はバランス感覚が無いらしく、ひょろ長い手足をいつも持て余している。何もないところで躓くのもしょっちゅうだ。
「えっと掲示板を利用したいんですけど」
 ふらついた足をなんとか着地させ、そのままの無理な姿勢で提出物を差し出す。対応に出てきた若い女性職員は笑いをかみ殺しているようだった。
「飼い主の募集、ですか。こちらの掲示板は市民の方はもちろん、職員も見ますから、案外すぐに反応があるかもしれませんね」
「そうだといいなあ。よろしくお願いします」
 猫は夕方に妹が邦彦の部屋に運んでいた。短い間ならば大家にばれることもないだろう。
「タダイマー」
 邦彦は、先ずは細く玄関を開けた。猫の姿は近くには見えない。猫が逃げてしまわないよう、素早く中に入った。
 六畳にユニットバスとキッチンがついただけの小さな部屋だ。一回り見渡せば猫はすぐ発見できた。壁とテレビの間に器用に収まっている。三毛の仔猫だった。十中八九メスだろう。
 ちっちっ、と舌を打って人差し指を動かしてみる。猫は邦彦を一瞥したものの、すぐに顔を背けてしまった。
(クールだなあ)
 そんなものなのかもしれない。諦めて冷蔵庫から缶ビールを出した。プルトップを上げる音に一瞬ぴくりと耳が震える。
「飲む?」
 彼女が近寄って来ることは無かった。 

 明けて火曜日。仕事を終えた邦彦が携帯電話を見ると、知らない番号からの不在着信が残っていた。
(もしかして、猫かな)
 留守番電話にメッセージも吹き込まれているようだ。まずは再生してみることにした。
 ――モシモシ!
 えらく元気の良い少年の声だ。ぴょおん、と擬音が付きそうな勢いに思わず笑ってしまう。
(高校生くらいかな?)
 ――ミナカワって言います。市役所の掲示板を見てかけました。猫、もしまだいたら、うちで飼いたいです。連絡貰えたら嬉しいです。
 敬語が板についていない感じはあるが、真摯な語り口だった。案外簡単に事は済むかもしれない。迷わず履歴の番号にかけた。
「はい、モシモシ!」
(あ、本人)
 同じ元気の良さだった。
「こんばんは。猫の飼い主募集をしている、佐東です」
「あっ、サトウさん。こんばんは!」
 人なつこい子なのだろう。初対面のぎこちなさが全くなく、しかもそれが鼻につかない。きちんと挨拶ができるところも好ましい。
「お電話ありがとう。猫をお願いする前に、君のこといくつか訊いていい?」
「ウン」
「君は高校生?」
「大学生。二年!」
「市内に住んでいる?」
「ううん。隣の九坂市。でも母ちゃんが八色なんだ。ほんとは飼いたがってるのは母ちゃん」
「お母さんは、誰かと一緒に住んでいる?」
「ううん。ひとり。でも母ちゃん近所付き合いも友達付き合いも多いから人はいっぱい出入りしてて、大家族みたいなもんだよ。オレもしょっちゅう顔出してる」
 張り紙の条件に合わないんだけど、受話器の声が申し訳なさそうに萎む。
「ダメかなあ」
「そうだねえ」
 市内ならば何かあったとき対応がしやすいし、人がいる家ならマメに面倒を見てくれるだろうと考えて付けた条件だ。当て嵌まるほうが望ましくはある。
「ちゃんと責任持つって約束できる?」
「できる! ゼッタイ!」
「……よし。じゃあ受け渡しの日時を決めよう」
「ほんとにっ?」
 ぱっと声が華やぐ。本当に分かり易い。
「でも会ってみてやっぱり信用できないって思ったらやめるよ」
「あはは」
 厳しいことを言ったつもりだった。
「大丈夫だとおもう。オレ、そういう勘外さないんだ」
 ミナカワは妙に自信ありげだった。

 ミナカワ――フルネームは皆川三朝(みなかわみささ)、九坂市の大学二年生、実家は八色市の海寄り。結局電話を切る前に把握できたのはその程度の情報だった。
 邦彦は自分の特徴について、全身黒ずくめでやたら背の高い男を捜せと伝えた。
(そういえば皆川くんについてもう一個知ってるな)
 即ちベースを弾くらしいこと、である。三朝は自分の特徴として、ベースを担いでいくからそれで見つけて、と言ってきたのだ。八色駅の改札前で視線を巡らせる。まだ三朝らしき人物は見あたらない。
 待ち合わせ時間まで十五分ある。邦彦は手持ちのキャリーを覗いた。この仔を託すに値するかどうか、子を持つ親の気分だった。
(絶対にそんな気持ち味わえないと思ってたんだけど)
 邦彦はゲイだ。異性と結婚をする予定はない。養子をとるつもりも今のところない。擬似的な結婚としての養子ならばまだしも可能性があるかもしれない。就職を機に実家を出たのは、家族にカムアウトをしたためでもある。妹を始め、家族は皆あっさりと事実を受け入れてくれた。邦彦のほうが驚いたくらいだ。邦彦自身もゲイであることを悪いことだなんて思わない。罪悪感も持たないと決めた。しかし何らかの形でけじめをつけておきたかった。
(皆川くんが良い子だといいねえ)
 応えるように三毛が小さく鳴いた。そのときだった。
「佐東さん?」
「え」
 誰もいないところから声がする――最初はそう思った。
「え。えっ」
「佐東さんそれ冗談? 本気ならちょっとオレ怒るけど」
 そう言われて下を見た。
 大きな黒い瞳が、真っ直ぐに邦彦を見上げていた。
「なんてね! こんにちは!」
 にかっと豪快な笑顔が零れた。
(ち……ちっちゃあ……!)
 口の端から見える歯も小さければ、ごつい指輪のはまった手も小さければ、ブーツの足も小さかった。邦彦からは完全に仔猫と同類、小動物の類に見える。
「皆川くん?」
「ウン」
 背中も小さい。背負ったベースが普通の人が持つものより一回り大きく見える。
「百五十センチある?」
「うっわご挨拶。ありますーギリギリありますうー」
 からりと笑い飛ばしたところを見ると、言われ慣れているのかもしれない。
「佐東さんと並ぶとますます小さく見えるんだろうな、きっと」
「ああ、おれ百八十センチくらいあるから」
「十センチでいいから分けて欲しい! ってそれはおいといて」
 三朝は邦彦の手にあるキャリーを目敏く見つける。腰を曲げて覗き込んで、ふわあ、と歓声を上げた。
「この仔だね。かっわいい!」
「そう。あげよっかな、どうしよっかな」
 節を付けて呟く。三朝は噴き出しながら小首を傾げた。
「佐東さんひょっとしてオモシロイ人?」
「さて」
 案の定三朝は、人の懐にひと息に飛び込んでくる。
「皆川くん電話でさ、自分は信用を裏切らないだろうみたいなこと言っていたよね。あれってどういうこと?」
「ああ、アレ? 裏切らないとかそんなタイソーなことじゃないよ」
 キャリーの間で三朝が指を揺らすと、三毛が素直に寄ってくる。邦彦のときは大して反応してくれなかったはずだ。なんだか負けた気分になる。
「ただの、勘。オレ動物みたいだってよく言われるんだ」
「野生の勘かあ」
(オモシロイのはどっちだよ)
「ねえ佐東さんこの勘当たり?」
 三毛の肉球が三朝の爪をぺしぺしと叩く。ここから出てもっと三朝と遊びたいと訴えるかのようだった。
「……どうやらそうみたい」
「やったあ!」
「ただし」
 ぴっと邦彦は指を立てる。
「たまに、猫の様子を見せて貰いたい。どこかで会えないかな」
 奇妙な縁をこれきりにするのは勿体ない。駄目で元々の提案だった。
 三朝はじっと邦彦を見た。野生の勘を働かせているのかもしれない。
「ウン。いいよ」
(いいんだ)
 警戒心が薄いのか、彼の勘が許したのか。ともかく縁は繋がった。
「なあオマエうちの仔だよ」
 キャリーをうきうきと撫でている。皆川三朝という生き物をもっと知りたかった。
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星香子(イラスト・漫画等)+りお(小説)+ねり(その他)

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